みなみけ〜おかわり〜最終話「みんな揃って、ごちそうさま」―「みなみけ」は壊れそうで壊れなかった?―

春香が留学することになったので、安心して旅立てるように妹ふたりが奮起して家事を練習し、こなす話。以前は仮病までして町内清掃をサボった夏奈が掃除に精を出したり、Aパートで一生懸命練習したハンバーグを春香に食べさせたりと、姉妹の絆のようなものが感じられて個人的にウルッと来てしまった。三姉妹で抱き合うシーンは反則でしょう、と。いい意味で。
作品としては、「みなみけ」無印から大きく方向転換した、せざるを得なかった(無印未視聴ですが、そもそも製作元も違うようなので)ことが大きな批判の対象となってしまったようですね。当然フユキの存在も含めてではありますが。
スタッフにそういう悪意があったかどうかは不確かですが、とにかく「みなみけ」を壊して独特のモノを作ってやろうという、下手をすれば原作ファンから総スカンをくらいつつも、上手くいけば独自のファンがつくという制作手法であったように思います。そしてこの作品は多くの視聴者から前者の反応を受けた、そういう作品だったように思います。
本作を当然「壊し」にかかったのはフユキの存在です。彼はほぼ無意味に隣の部屋に引っ越して来て、後半になればなるほど存在感が薄れ、最後はやはり無意味に消えていった、そういうキャラであったことは否めません。前回フユキが去った時に、「結局コイツは何の為に出て来たんだろう」と思われた方も多かったように思います。なるほどそれは確かにちょっと思います。けれども、千秋が今回春香に泣きついたシーンを思い出して下さい。そして、前回フユキが千秋に別れを切り出せずに去ってしまい、「言いたいことがあるならハッキリ言え」と千秋がつぶやいていたシーンを思い出して下さい。フユキは「みなみけ」世界を壊すために登場しましたが、「みなみけ」世界から去っていく人物として設定されたが故に、春香の留学を阻止したのです。自分でもよくわからない言い回しですが、多分スタッフは「みなみけ」に無かったであろう「別れ」を描きたかったのではないかと。そのために春香の留学問題を取り上げて、春香を留学させる代わりにフユキを去らせることにしたのではないかと。こうすることで「去りゆく人物」としてはフユキを描けますし、春香が留学しないことによって三姉妹の絆を描くことが出来たわけです。「別れ」は「みなみけ」世界を崩壊させますが、元々「みなみけ」世界に存在しないフユキを「別れ」させることは世界を崩壊させません。フユキの存在が作品世界を壊しそうで、崩壊から救ったのです*1。とにかく、一応手紙が来ていたということでフユキが救われたとは思いますし(テレビの画質が悪いので文面が特定出来ませんでしたが)、これで良かったことにしておいて下さい。転校続きで友達の出来なかったであろうフユキと千秋が関わることによって、フユキの存在が「おかわり」内で千秋の成長を誘発させるとともに、千秋の存在がフユキをまた成長させていたんだと思うことにしておきます。
無印の評判が良かった中で非常に苦しい状況であったと思いましたが、1クール楽しませていただきました。

*1:異論も多々あるとは思いますが、感情で喋っていますので、ビシッと批判されると降参です。