パスカル「パンセ」前田陽一・由木康訳 中公文庫

人間はひとくきの葦にすぎない。自然のなかで最も弱いものである。だが、それは考える葦である。彼をおしつぶすために、宇宙全体が武装するには及ばない。蒸気や一滴の水でも彼を殺すのに十分である。だが、たとい宇宙が彼をおしつぶしても、人間は彼を殺すものより尊いだろう。なぜなら、彼は自分が死ぬことと、宇宙の自分に対する優勢とを知っているからである。宇宙は何も知らない。
だから、われわれの尊厳のすべては、考えることのなかにある。われわれはそこから立ち上がらなければならないのであって、われわれが満たすことのできない空間や時間からではない。だから、よく考えることを努めよう。ここに道徳の原理がある。
 (パスカル「パンセ」)

前々から読みたかったのですが、おそらくetude「そして明日の世界より――」(メモ123、いずれもネタバレ注意)が無ければしばらくは読まなかったであろう一冊。
実際に読んでみるとグサグサと突き刺さるようなところがあって、たとえば「欠点を指摘してくれる人間を大事にしろ」だとか、思わず弱い自分が目を背けてしまいそうな文がつまってますね。後半のキリスト教万歳!な部分は宗教に対する教養が無さ過ぎるため理解しづらいところもありましたが、自分にとってキーになりそうな部分だけを拾い読みしても十分優れた本になると思います。オススメの一冊・・・とまぁ、既に読破されている方も多いでしょうけれども。
ちなみに、「そして明日の世界より――」は、この「パンセ」をモチーフにしたオススメの一作です。泣きゲーが好き、健速氏のテキスト(某こなかな等・・・他は未プレイなのですが)が好きな人なんかは特にオススメ。ただしエロゲーなので、良い子は18になってからプレーするか、コンシューマ移植、アニメ化を待ちましょう。

「人間は世界の中では最も弱い葦のようなものだけど、考える葦なんだ、という言葉です」
「いちばん有名なのはここまでなんですが、実は続きにもっと大事な事が書かれているんです。主に今の部分の補足なのですが」
『大切な事は全て私達の想いの中にある』
『私達を立ち上がらせるものはそこからやってくるのであって』
『満たすすべのない場所や時によってあるものではない』
『故に想う事を忘れずに』
『そこにこそ、あるべきすがたがある』
「現書では『あるべきすがた』は『le principe de la morale』、直訳すると『モラルの根源』と記されています」
「他の本では『道徳の原動力』や『道義の根拠』などと訳されていたりします」
 (水守御波、etude「そして明日の世界より――」)