etude「そして明日の世界より――」評/論(1)

まずシンプルに感想を。非常に面白かったです。
人類絶滅の危機に立たされた時、離島に生きる無力な主人公やヒロイン達は何を思い、どう過ごすか。そういったテーマにぶつかりながら、しかし超自然的な事態で解決、という逃げも取らなかった姿勢を評価したいですね。オススメの一作。

以下は整理用メモ等(主に自分のためです)。
当然ネタバレ全開のため、プレイ済みであることを前提としています。



俺達の世界はあまりにも簡単に崩れていく。
実際に世界が手を下す前に。
これから始まるのは、俺達の小さな世界に訪れた二週間ばかりの例外の物語だ。
それは世界の残酷さと俺達の弱さを思い知らされる日々。
しかしだからこそ、そこに全ての答えがあったのだと思う。
大事な事は全て俺達の・・・・・・。

本作のストーリーをいたって簡潔に語るとすれば、以下のような流れになります。
・3ヶ月後に隕石が落ちてきて人類全滅、というニュースが流れる
→死への恐怖によって混乱する
→克服して友人(ヒロイン)達と共に生きていく(死に向かってではありますが)ことを決意する
→主人公が島でたった一人、シェルターによって生き残ることが出来ることが判明する
→果たして自分は友人達を置きざりにして生きていていいのかと悩む
→自分が友人達(ヒロイン)を必要としていることを知り、シェルター行きをやめて友人(ヒロイン・達)と共に生きることを決意する(当然、死に向かって)


という流れです。シナリオの特性上、全てのルートがこの流れに沿って進むこととなります。なぜ友人とヒロインを等価に置いたのかは、作品をプレイした人なら理解出来ると思いますし、後で触れるかもしれません。とりあえずこのストーリーだけ見ると、「極限状況下で人はどのように死を受け入れて生きていくのか」というテーマが浮かんできますね。
しかし、本作はそれに尽きるものではないと思います。そのために本論では、本作の持っている魅力を最大限に語ることにしたいと思います(出来るかどうかはともかく)。


まず、キャラクターの配置について。「主人公」の昴(がんちゃん)は当然のこと、4人の個性的なヒロインにはそれぞれ「役割」が割り振られています。
・夕陽・・・『がんちゃん原理主義者』
・朝陽・・・先生、姉ちゃん
・青葉・・・対等な親友
・御波・・・転校生、病弱少女
といった感じです。ここまでは普通ですし、どんな作品でもこういった割り振りはされるものです。他にも主人公の両親、日向姉妹の父親、島一番の金持ちで好々爺の八島のじいちゃんが出てきますが、これ以外の人物はほぼ置き去りです。そもそも昴のクラスメイトは夕陽、青葉、御波の三人のみで、同年代の同性の友人は一切出てきません。
詳しいことは明日以降に回しますが、4人のヒロインは極限状況下で「役割」をこなすことに、あるいは誰かの「模倣」をすることに懸命になります。与えられた「役割」に忠実になることに、シナリオのレベルで、あるいは「キャラクター」(これこそまさに「役割」ですね)のレベルでこだわります。そしてその「役割」に対する徹底したこだわりをどう処理していくのか。明日以降に回すこととしますが、今日は軽くメモだけ書いておきます。

・昴・・・夕陽や朝陽、友人達を守るという役割が八年前から与えられている。
・夕陽・・・夢は「がんちゃんのお嫁さん」。八年前から昴にぴったりとくっつき、何でも真似をしようとする。
・朝陽・・・母親のいない日向家では母親代わりを、学校では教師をしつつ、懸命に夕陽を守ろうとしている。
・青葉・・・昴の「親友」であることに執着する。夕陽に勝つことを目標としている。
・御波・・・「普通」になろうとする。転校生や病弱のため、他の4人とは多少違ったキャラクターですので、詳しい事は後述。