「思想地図vol.4」が普通に面白い

「思想地図vol.4」読了。このシリーズは毎巻購入して読んでいるんだけど、今回が一番面白かったように思う。「近景」「遠景」の話があったけれども、今の自分にとっては具体的なアニメ作品――対談に出てくるような「けいおん!」「サマーウォーズ」「ヱヴァ破」――なんかが近景で、正直思想的な部分はちんぷんかんぷんな「遠景」に過ぎない。そういうとき、頑張って(?)遠景に近づこうとする人と、ぬるま湯に浸かって近景だけをどっぷり味わおうという人に分かれると思う。自分はどちらかと後者。
そういう意味では、具体的な作品を通して、抽象的でない話題を取り扱った今回の特集は、どの論も刺激的だった。中でもやっぱりヤマカンが出てきた座談会は、今年のアニメの総括になっていて、「近景」しか知らない人でも十分に楽しめ、かつ「遠景」に接近できる機会だったのでは。詳しくはEpisode Zeroさんがまとめて下さっているので(http://d.hatena.ne.jp/episode_zero/20091129/p1)、是非ともそちらを。ただ、相変わらず宇野常寛氏の空気系批判は強烈。「セカイ系」を批判し、「空気系」も古い「サプリメント」に過ぎないという見方は「ゼロ年代の想像力」から一貫していて強い。あと相変わらず「広義の東フォロワー」に対する風当たりも強いしなぁ。宇野氏は迷いなく次代のモデルを設定してるので、現在最強の論者かもしれないとか思ってしまった。
あとは阿部和重鹿島田真希両氏の創作が面白い。元ネタがあっさりわかってしまったのでニヤリとしてしまったけど、どうもそれだけに留まらないらしい。とりあえず今後もヤマカンに期待したいということで。いや、これは実際読んで損はないと思う。

社会は存在しない――セカイ系文化論
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ゼロ年代の想像力
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